BizOpsの採用は「スキル」ではなく「行動特性」で決める――後から身につくものと、身につかないものの線引き

BizOpsの採用は「スキル」ではなく「行動特性」で決める――後から身につくものと、身につかないものの線引き

株式会社テイクアステップ 代表取締役社長 兼 一般社団法人BizOps協会 代表理事の祖川慎治です。

この記事の要点(3行サマリ)

  • BizOps人材の採用は、スキルよりカルチャーフィット(行動特性)を優先します。スキルは入社後に積み上がりますが、行動特性は教育ではほとんど変わりません
  • 見極める行動特性は5つです。正解がない中で動き出せるか、担当外の課題に当事者意識を持てるか、事業全体の成果を自分ごとにできるか、線を引かずに越境できるか、泥臭い作業を厭わないか
  • スキルの不足はチームで補えます。カルチャーのミスマッチはチームを壊します。だから採用条件には「スキルの全量」ではなく「学び続けられる人か」を置きます

「BizOpsの担当者を採りたいけれど、Salesforceも分かって、SQLも書けて、業務設計もできる人が見つからない」。こうした相談を受けることがあります。

この記事は、BizOpsの機能を社内に立ち上げようとしている経営者・責任者の方と、チームの採用基準づくりを任された方に向けて書いています。


目次

  1. BizOpsの採用で何を優先すべきか
  2. なぜスキルより行動特性なのか
  3. どんな行動特性で見極めるのか
  4. 足りないスキルはどう補うのか
  5. BizOps人材はどこで見つけるのか
  6. よくある質問

BizOpsの採用で何を優先すべきか

BizOps人材の採用は、スキルよりもカルチャーフィットを圧倒的に優先します。

私がBizOpsチームを立ち上げたとき、最初に打った社内公募は応募者ゼロで終わりました。その経緯と、なぜ人が集まらなかったのかは社内公募で手を挙げた人がゼロだった話に書いています。

そこから採用方針を根本から見直して、たどり着いたのがこの結論です。

ここで言うカルチャーフィットは、「同じ空気を吸える仲間か」という曖昧な相性の話ではありません。仕事に向かうときの具体的な行動特性の話です。


なぜスキルより行動特性なのか

スキルが足りないのは「まだ知らないだけ」です。行動特性が合わないのは「根本的に向いていない」ということです。この二つは性質が違います。

BizOpsに求められるスキルは幅が広いです。

  • 業務プロセスの設計
  • SaaSの設計・構築
  • データの集計と分析
  • 部門をまたぐプロジェクトの推進
  • 相手に合わせて言葉を切り替えるコミュニケーション

これらを入社初日から全部持っている人は、ほぼいません。

ただ、スキルは後から積み上がります。Salesforceの設定は入社後に学べますし、SQLの基礎も業務で触れていれば身につきます。業務フローの描き方はOJTで覚えられます。環境と本人の意欲があれば、時間をかけて確実に伸びる領域です。

一方、仕事へのスタンスは教育ではほとんど変わりません。「それは私の仕事ではない」が口癖の人に、研修で越境の姿勢を身につけてもらうのは現実的ではありません。

項目スキル行動特性(カルチャーフィット)
例SaaS設定、SQL、業務フロー作図越境する、仮説で動く、手を動かす
後から伸びるか伸びる(学習・OJT)ほぼ変わらない
足りないときチームで補えるチームを壊す

BizOpsは、部門を横断し、ときに利害が対立する中で全体の最適解を探る仕事です。自分の専門領域に閉じこもる人や、指示がないと動けない人は、どれほどスキルが高くてもBizOpsのチームには馴染みません。

私が当時いた会社は、急成長の中で毎月まとまった人数が入社していました。それでも経営トップは「経営とは採用である」という考えで、スキルの羅列より価値観と行動特性を見る採用を貫いていました。この全社の文化が、BizOpsチームづくりの追い風になりました。


どんな行動特性で見極めるのか

BizOps人材の面接や日々の仕事ぶりで見るのは、次の5つの行動特性です。

#行動特性見るポイント
1正解がない状況で動き出せる立ち止まらず、仮説を立てて手を付けるか
2担当外の課題に当事者意識を持つ「自分の範囲外」で片づけないか
3事業全体の成果を自分ごとにする部門の数字だけで仕事を語らないか
4必要なら線を越える「自分の仕事はここまで」と線を引かないか
5泥臭い作業を厭わない手を動かすことに抵抗がないか

どれも経歴書には書かれていません。だから、過去の仕事で「頼まれていないのにやったこと」や「担当外なのに引き取ったこと」を具体的に聞きます。そこで出てくるエピソードの量と温度で、ほぼ判断がつきます。

BizOpsの仕事は「今の課題を直す」だけで終わりません。事業が変われば、求められる知識も変わります。新しいSaaSが入れば新しい技術が要りますし、事業領域が広がれば業務知識の幅も変わります。固定されたスキルセットを採用条件にするより、変化に合わせて学び続けられる人かを見極めるほうが、長い目で見てチームを強くします。


足りないスキルはどう補うのか

BizOpsに要るスキル(業務設計・SaaS構築・データ分析・全社横断の推進・翻訳力など)を1人で高い水準まで持つ人はほぼいません。だから、チームで補う前提で役割を分けます。

4名で始める場合の構成例です。

役割主な担当求められる強み
BizOpsリーダー全体統括・経営との接続・優先順位の決定逆算思考・推進力・翻訳力
システム設計担当SaaSの設計・構築・運用業務要件をシステムに落とす力
データ分析担当KPI設計・ダッシュボード・データ基盤集計・可視化・数字の読み方
業務改善担当業務フローの可視化・改善の推進ヒアリング・フロー設計・現場調整

組織の規模や事業フェーズで構成は変わります。スタートアップならリーダー1名と兼務メンバーの体制から始めることもありますし、大企業なら各事業部の担当者を本社で束ねる形もあります。

リーダーの仕事は、BizOpsに要るスキルの全体像を分かったうえで、今のチームに何が足りないかを常に把握しておくことです。足りない部分を採用で補うのか、育成で埋めるのか。この判断を続けます。その際も、採る人の条件はスキルより行動特性が先です。


BizOps人材はどこで見つけるのか

組織が伸びている会社では、外から探すより、入社してきた人の中からBizOpsの適性を見つける「社内スカウト」のほうが早いことがあります。

私の場合、入社後の研修や配属面談の段階で、向いていそうな人に目星をつけていました。見ていたのは次のような兆しです。

  • 部門をまたいで物事を見ている
  • システムや仕組みに興味がある
  • 困りごとを「人の頑張り」ではなく「仕組み」で解こうとする

ただし前提条件があります。声をかける相手が「BizOpsとは何か」を知らなければ、「何の仕事ですか?」で終わってしまいます。BizOps担当の社内公募で応募が集まらなかったのと同じ壁です。仕事の中身を先に見せる活動とセットで動かす必要があります。


よくある質問

Q. スキル要件をまったく置かないのですか?

置かないわけではありません。チームの中で今足りていないスキルは、採用の際の加点要素として見ます。ただ、行動特性が合わない人を、スキルが高いという理由だけで採ることはしません。

Q. 行動特性は面接だけで見抜けますか?

面接だけでは限界があります。社内から選ぶ場合は、日々の仕事ぶりを見られるのが強みです。外部から採る場合は、過去に担当外の課題をどう扱ったかを、具体的な場面まで掘り下げて聞きます。

Q. 1人目のBizOps担当者にも同じ基準を使いますか?

使います。1人目ほど、正解のない状況で動き出せるかどうかが成果を左右します。足りないスキルは、外部の力を借りながら埋めていけば十分です。


お知らせ

「BizOpsの担当を置きたいが、どんな人を選べばいいか分からない」「採用条件がスキルの羅列になっている」。そんな経営者・責任者の方は、お気軽にご相談ください。

現場に入って、今のチームに足りない役割と、選ぶべき人物像を一緒に整理するところから始めます。初回のご相談は無料です。

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参考文献・出典

  • 本記事は、筆者が執筆中の書籍『BizOps本(仮題)』第6章「BizOpsチームの立ち上げと人材戦略」の議論を、筆者自身の実体験を中心に再構成したものです
  • チーム構成例は、筆者の実務経験に基づく一つの出発点であり、組織の規模や事業フェーズによって変わります

この記事を書いた人

祖川 慎治(そがわ・しんじ)

株式会社テイクアステップ 代表取締役/一般社団法人BizOps協会 代表理事。大手メーカー・大手SIerを経て、HR Techベンチャーで全社の業務改善を担うBPR部署の責任者として社内IT戦略の立案から実行・定着化までを担当。5年で300名から1,400名へ成長する組織とIPO実現を業務基盤の面から下支えした。2021年に株式会社テイクアステップを設立し、BizOps・業務プロセス設計の実行支援を行う。ポッドキャスト「どうする?BizOps」配信中。

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