「何でも屋」は器用貧乏ではない――業務改善・BizOpsの経験が、CTO・COO・CEOのどこにも通じる理由

「何でも屋」は器用貧乏ではない――業務改善・BizOpsの経験が、CTO・COO・CEOのどこにも通じる理由

株式会社テイクアステップ 代表取締役社長 兼 一般社団法人BizOps協会 代表理事の祖川慎治です。

この記事の要点(3行サマリ)

  • 部門横断で業務改善・システム導入・データ整備を担う「何でも屋」は、キャリアの行き先が見えにくい仕事です。しかし仕事を分解すると、CTO・COO・CEOのいずれにも通じる能力の土台がそろっています。BizOpsは「キャリアの交差点」に立つ仕事です。
  • 一つひとつのスキルは飛び抜けていなくても、IT・業務設計・プロジェクト推進・データ分析・コミュニケーションを掛け合わせるほど、同じことができる人は減っていきます。希少性は「掛け合わせ」から生まれます。
  • BizOpsの成果は「仕組み」として組織に残ります。積み重ねるほど、会社の看板ではなく個人の名前で信頼されるキャリアに近づきます。

こんな悩みを抱えていませんか。

  • 「結局あなたの専門は何ですか」と聞かれて、一言で答えられない
  • 営業でもエンジニアでもなく、社内で自分の仕事を説明しにくい
  • この仕事を続けた先に、どんなポジションがあるのか見えない

この記事は、社内で業務改善やシステム導入を「なんとなく全部」担っている方と、そうした人材をどう育て、どう処遇するかを考えている経営者・責任者の方に向けて書いています。


目次

  1. 「何でも屋」のキャリアのゴールはどこにあるのか?
  2. BizOpsの経験はCTO・COO・CEOにどうつながるのか?
  3. 器用貧乏にならないためには? 希少性は「掛け合わせ」から生まれる
  4. 「何でも屋」の経験は、どう伝えれば評価されるのか?
  5. スキルの幅はどうやって広げるのか? 社内の兼務と社外の活動
  6. 会社の看板ではなく、個人の名前で信頼されるには?
  7. BizOpsのスキルは独立しても通用するのか?
  8. よくある質問

1. 「何でも屋」のキャリアのゴールはどこにあるのか?

「結局、この仕事のキャリアのゴールはどこなんですか?」

BizOps協会のコミュニティで、若手のメンバーからこう聞かれたことがあります。営業なら営業部長、エンジニアならテックリードやCTO。多くの職種には分かりやすい道筋があります。部門横断で何でも引き受ける仕事には、それが見えません。

私の答えはこうです。

BizOpsは、CTO・COO・CEOのいずれにも進める「キャリアの交差点」にいる。

誇張ではありません。BizOpsの仕事を分解すると、経営トップに求められる能力の土台が一通り含まれているからです。特定の領域に閉じないからこそ、どの方向にも道が開けています。「何でも屋」であることは、「何者にもなれる」ということです。


2. BizOpsの経験はCTO・COO・CEOにどうつながるのか?

方向強みの軸BizOpsで培える経験
CTOテクノロジー戦略SaaSの設計・データ基盤の構築・API連携
COOオペレーション設計部門横断のプロセス設計・業務改善・定着
CEO事業戦略・全体最適経営と現場の翻訳・全社横断の意思決定支援

CTO方向:BizOpsの日常には、SaaSの選定と設計、データ基盤の構築、業務自動化が組み込まれています。CTOに求められる本質は、コードを書く力ではなく「テクノロジーで事業をどう動かすか」を構想し、実行する力です。技術を経営の文脈で語れる経験は、ここで効いてきます。

COO方向:COOは、日々のオペレーションが回り、効率が上がり、組織が成長していく仕組みを作る人です。営業からカスタマーサクセス、バックオフィスまで部門を横断してプロセスを設計し、定着させる。BizOpsの仕事と最も重なるポジションです。

CEO方向:CEOに求められるのは、事業全体を俯瞰し、資源を配分し、意思決定する力です。経営が描いた戦略がなぜ現場で機能しないのか、現場の課題がなぜ経営に届かないのか。この断絶を日常的に埋めてきた経験は、経営者の素養そのものです。

どの方向に進むかは、本人の志向で決まります。技術に惹かれるならCTO方向、組織を動かす面白さならCOO方向、自分で事業を作りたいならCEO方向です。


3. 器用貧乏にならないためには? 希少性は「掛け合わせ」から生まれる

BizOpsが身につけるスキルは、大きく5つの領域に分かれます。

領域中身
IT・テクノロジーSaaS導入・設計、データ基盤、API連携、自動化
業務設計プロセスの可視化・再設計、標準化
プロジェクト推進部門横断のマネジメント、関係者の調整
データ分析KPI設計、ダッシュボード、意思決定支援
コミュニケーション経営と現場の翻訳、利害調整、変革の推進

共通点は、どれも特定の会社や業界に依存しないことです。会社を辞めても持ち出せる、いわゆるポータブルスキルです。

真の力は、これらの掛け合わせから生まれます。

  • 「SaaSを使える人」は多い
  • 「SaaSで営業プロセスを設計し、経営にKPIを返せる人」は一気に減る
  • 「それを部門横断のプロジェクトとして推進し、現場のマネージャーとも経営層とも対等に話せる人」はさらに減る

一つひとつは飛び抜けていなくても、掛け合わせが増えるたびに「同じことができる人」は減っていきます。

私自身がそうでした。前職で、この仕事の出発点になったのはSaaSのシステム管理者という役割です。システムの知識だけなら、私より優れたエンジニアは社内に大勢いました。ただ、営業プロセスの設計、経営への数値報告、部門横断の変革推進を一人で一気通貫にこなせる人は、社内に他にいませんでした。その結果、事業統合の構想段階から経営陣に声をかけられる立場になりました。

ただし注意点があります。すべてが中途半端では、掛け合わせの効果は出ません。

  • 5つのうち少なくとも2つは「専門家と対等に議論できるレベル」まで引き上げる
  • 残りは「自分で手を動かせるレベル」を保つ

この濃淡のつけ方が、キャリアを左右します。


4. 「何でも屋」の経験は、どう伝えれば評価されるのか?

「BizOpsをやっていました」「社内の業務改善を担当していました」と伝えても、相手にはピンと来ません。「何でも屋」の経験は、伝え方を変えるだけで評価が大きく変わります。

伝わりにくい言い方伝わる言い方
業務改善を担当していました営業プロセスの設計からシステム実装、定着まで一気通貫で担いました
各部署の調整役でした部門間で食い違っていたKPIの定義を揃え、経営会議の数字を一本化しました
いろいろなツールを入れました部門ごとに分断していた顧客データを、一つの流れでつなぎました

ポイントは、**「何をやったか」ではなく「どこからどこまでを、一人でつないだか」**を言うことです。複数の職種の仕事を一人でカバーしてきた実績は、組織にとって強い魅力になります。


5. スキルの幅はどうやって広げるのか? 社内の兼務と社外の活動

掛け合わせのスキルは、放っておくと偏ります。全社横断の立場にいると、設計やシステム構築といった上流に寄り、現場の肌感覚から離れていきがちです。幅を保つ方法は、社内と社外に一つずつあります。

社内:事業部の兼務

BizOps部門に所属しながら、特定の事業部の業務を兼務します。同じ会議に出て、同じ数字を追い、同じ顧客の話を聞く。すると提案のときに「データによると」ではなく「あの案件で感じたのと同じ問題ですよね」と、現場の言葉で話せるようになります。

リスクは、兼務先の仕事に吸収されることです。忙しくなるほど全社横断の仕事が後回しになります。兼務の比率を数字で合意し、上長と共有しておくことで防げます。

社外:コミュニティ・副業・発信

一社の中にいる限り、見えるのは「その会社での最適解」だけです。業界や規模が違えば、オペレーションの常識も変わります。

  • 実践者のコミュニティで、同じ課題への別の解き方を知る
  • 副業・兼業で他社の業務を手伝い、自社との「差分」に触れる
  • ブログや登壇で経験を言語化し、暗黙知を再現できる形にする

特に言語化は、自分のスキルの輪郭をはっきりさせます。「なんとなくうまくいった」プロジェクトを、「この手順なら再現できる」まで分解する作業そのものが、次の仕事の武器になります。


6. 会社の看板ではなく、個人の名前で信頼されるには?

ビジネスパーソンのキャリアには、二つのモデルがあります。

モデル信頼の紐づき先会社を離れたとき
看板モデル「○○株式会社の誰々さん」信頼の基盤が消える
個人名モデル「誰々さんが携わった会社はすごい」信頼がそのまま残る

BizOpsは、後者に近づきやすい構造を持っています。理由は三つです。

  1. 成果が「仕組み」として残る:営業プロセスやデータ基盤、部門間連携のフローは、担当者がいなくなっても組織に残り、動き続けます
  2. 横断的だから、多くの人に仕事を見てもらえる:営業も経理も経営層も、BizOpsの仕事を直接見ています。認知する人の数が多い分、評判が社外にも広がりやすくなります
  3. 業界を超えて通用する:掛け合わせのスキルは業界に依存しません。業界をまたいで成果を出すほど、「○○業界の人」ではなく「オペレーションのプロ」として認知されます

個人の名前で信頼されることは、組織への忠誠心の欠如ではありません。「あの会社には誰々さんがいるから強い」という評価は、その人を擁する組織の評価でもあります。個人のブランドと組織のブランドは、互いを高め合う関係です。

経営者の方にとっては、ここが人材戦略の論点になります。社内の「何でも屋」を、名前のある仕事として処遇し、社外で語られる存在に育てられるかどうかです。


7. BizOpsのスキルは独立しても通用するのか?

私は前職を離れ、株式会社テイクアステップを設立しました。現在は複数の企業で業務設計やデータ整備の仕事を一緒にやりながら、BizOps協会の代表理事として、この仕事の認知を広げる活動を続けています。

独立して実感しているのは「自由と責任」です。

  • 自由:どの仕事を受けるか、誰と働くか、時間をどう使うかを自分で決められる
  • 責任:成果が出なければ契約は終わる。会社員時代の安全網はない

この働き方を支えているのが、BizOpsのスキルです。業務プロセスを設計する力、テクノロジーで仕組みを作る力、部門の壁を越えて人を動かす力、データから意思決定を導く力。どれも特定の製品や業界の知識ではなく、事業を動かすための汎用的な能力です。会社が変わっても、業界が変わっても、独立しても使えます。

もちろん、独立だけがゴールではありません。一つの組織のBizOpsを極める道も、COOやCTOとして経営に参画する道も、自分で事業を立ち上げる道もあります。どの道を選んでも、BizOpsで培った経験は土台として機能します。

冒頭の問いに、あらためて答えます。

ゴールは一つではありません。あなたが描いたゴールのどこにでも、BizOpsの経験は通じます。


8. よくある質問

Q1. BizOpsという部署がない会社でも、このキャリアは築けますか。

A. 築けます。部署名が「業務改善」「DX推進」「経営企画」「情報システム」であっても、部門を横断して業務とシステムをつなぐ仕事をしているなら、同じスキルの掛け合わせが身につきます。大切なのは部署名ではなく、どこからどこまでをつないできたかです。

Q2. ジェネラリストは転職市場で不利ではありませんか。

A. 「広く浅く」のままだと不利になりえます。5つの領域のうち2つを専門家と対等に議論できる深さまで引き上げ、そのうえで「一気通貫でつないだ実績」として伝えれば、単一スキルの人材にはない強みになります。

Q3. 社内の「何でも屋」を、経営としてどう処遇すればよいですか。

A. まず、その人が担っている仕事に名前をつけ、組織図と評価の上に載せることです。名前のない仕事は予算も評価もつきにくく、担当者が疲弊して離れていきます。キャリアの行き先を一緒に描けることが、定着の条件になります。

Q4. 兼務の比率は、どのくらいが適切ですか。

A. 一律の正解はありません。大切なのは比率そのものより、数字で合意し、上長と共有しておくことです。兼務先の業務量が増えたときに、誰と誰が調整するかを先に決めておくと、兼務先への吸収を防げます。


お知らせ

社内で業務改善やシステム導入を一手に担っている方の役割を、名前のある機能として組織に位置づけたい。そんな経営者・責任者の方は、お気軽にご相談ください。

現場に入って、担当者の方と一緒に業務と役割を棚卸しするところから始めます。初回のご相談は無料です。

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参考文献・出典


この記事を書いた人

祖川 慎治(そがわ・しんじ)

株式会社テイクアステップ 代表取締役/一般社団法人BizOps協会 代表理事。大手メーカー・大手SIerを経て、HR Techベンチャーで全社の業務改善を担うBPR部署の責任者として社内IT戦略の立案から実行・定着化までを担当。5年で300名から1,400名へ成長する組織とIPO実現を業務基盤の面から下支えした。2021年に株式会社テイクアステップを設立し、BizOps・業務プロセス設計の実行支援を行う。ポッドキャスト「どうする?BizOps」配信中。

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