BizOpsとは何か?「数は現場、間(あいだ)はBizOps」で理解する役割と成果の出し方

BizOpsとは何か?「数は現場、間(あいだ)はBizOps」で理解する役割と成果の出し方

株式会社テイクアステップ 代表取締役社長 兼 一般社団法人BizOps協会 代表理事の祖川慎治です。

御社に、こんな状況はありませんか?

  • アポ数や商談数は目標を達成しているのに、受注が思ったほど伸びない
  • インサイドセールスから営業に渡した商談が、いつの間にか「延期」のまま消えている
  • 「BizOps」や「RevOps」という言葉は聞くが、自社の誰が何をする仕事なのか説明できない
  • SFAは入れたが、営業会議では結局スプレッドシートの数字が使われている
  • 受注予測が、月末になると大きくずれる

一つでも心当たりがあるなら、問題は現場の頑張りではなく、工程と工程の「間」にあります。

この記事の要点(3行サマリ)

  • 数は現場、間はBizOps。 数を生むのは現場の仕事です。BizOpsは、工程の「間」に潜む滞留を削り、リードタイムを縮めて率を上げる仕事です
  • 成果の多くは、工程の中ではなく、部門から部門へ渡る「間」で失われています
  • 私がHR Tech企業で関わったSalesforceの定着プロジェクトでは、社内最大の営業部門で月当たりの商談成約率が約2倍になりました。変えたのは営業の頑張りではなく、「間」の扱いでした

目次

  1. 「数は現場、間はBizOps」とは何か
  2. なぜ成果は工程の「間」で失われるのか
  3. リードタイムを縮めると、なぜ率が上がるのか
  4. BizOpsは「間」に対して具体的に何をするのか
  5. SalesOps・RevOps・BizOpsは何が違うのか
  6. 「間」の改善はAIに代替されるのか
  7. 御社の「間」は、誰が持っていますか
  8. よくある質問

「数は現場、間はBizOps」とは何か

数を生むのは現場。工程の「間(あいだ)」に潜む滞留を削り、リードタイムを縮めて率を上げるのがBizOps。 これが、私がBizOpsを一行で説明するときの定義です。

営業の成果は、ざっくり「数 × 率」で決まります。

アポを何件取るか、商談を何件つくるか。これは現場の仕事です。行動量を増やし、提案の質を上げる。ここに外から口を出しても、たいていうまくいきません。

一方、率は事情が違います。アポから商談、商談から受注へ。この転換率は、個人の腕だけでなく、工程と工程のあいだで何が起きているかに大きく左右されます。そして「間」は、誰の担当にもなっていません。

インサイドセールスは、アポを渡した時点で自分の仕事を終えています。営業は、商談が始まってから自分の仕事が始まると考えています。その隙間に落ちた案件を拾う人は、組織図のどこにもいません。

だから、BizOpsが持ちます。これが「間のオーナー」という考え方です。

経営者の方へ: 御社の営業KPIを、「数」と「率」に分けて並べてみてください。数の担当者は全員名前が書けるはずです。工程間の転換率の担当者は、名前が書けるでしょうか。


なぜ成果は工程の「間」で失われるのか

成果が失われるのは、工程の中よりも、工程と工程の「間」です。 工程の中には担当者がいて、間にはいないからです。

典型的なのが、インサイドセールスから営業への引き継ぎです。

アポは取れた。ところが営業側の日程調整が数日遅れる。その間にお客様の温度が下がる。「社内で検討してから改めて」と延期になり、そのまま自然消滅する。

誰も手を抜いていません。インサイドセールスは数字を達成し、営業は手持ちの商談で手一杯だった。それぞれの工程は、正しく回っています。

消えたのは、間です。

この構造は、営業の前工程だけではありません。受注から契約、契約から請求にも同じことが起きます。私が以前いた組織では、複数の事業がそれぞれ独自の請求の仕組みを持っていて、それらの事業をご利用のお客様には、フォーマットも到着日も違う請求書が別々に届いていました(詳しくはBizOpsがあなたの会社で必要な理由に書いています)。これも、事業と事業の「間」で起きていたことです。

御社では、どの引き継ぎで案件が止まっていますか?


リードタイムを縮めると、なぜ率が上がるのか

リードタイムを縮めると率が上がるのは、商談の価値が時間とともに目減りするからです。

お客様の検討には、熱量のピークがあります。課題を感じて問い合わせた瞬間、比較検討を始めた瞬間。この熱量は、放っておけば下がります。

  • 社内の別の優先事項に押し出される
  • 競合が先に提案に入る
  • 担当者が異動する、予算の時期を逃す

つまり「間」で過ぎた日数は、ただの待ち時間ではありません。失注の確率を少しずつ積み上げている時間です。

だから、間の滞留を削ってリードタイムを縮めると、率が上がります。行動量を1件も増やさなくても、です。数を増やすには人と時間が要ります。率を上げるなら、間を詰めればいい。BizOpsが「率のオーナー」になれるのは、このためです。

HR Tech企業で起きたこと

ここからは、私自身が関わった事例です。

そのHR Tech企業では2011年頃にSalesforceを導入していましたが、現場に定着しきらず、商談情報は各営業が個別に管理している状態でした。スプレッドシートやホワイトボードでの二重、三重の管理も残っていて、月末にレポートされる当月の受注予測が、実績と10〜15%ずれることも珍しくありませんでした。

そこで2017年2月、定着化をテーマにしたプロジェクトを始めました。スプレッドシートやホワイトボードによる商談管理を全廃し、Salesforce上での管理を徹底する取り組みです。

その結果、2017年8月頃には、社内で最も大きな営業部門で、月当たりの商談成約率が従来のおよそ2倍になりました。トップセールスだけでなく、部内の各担当者の成約率が軒並み上がっています。受注予測と実績のズレも解消しました。

(第三者の公開情報:東洋経済オンライン(2018年7月、セールスフォース記事広告)。上記の時期・数値は私自身の実績です)

公開されている事例では、この成果は「情報の一元化と定着」によるものとして紹介されています。ここからは当事者としての解説です。私は、一元化によって初めて**「間」が見えるようになった**ことが本質だったと考えています。

情報が個人のスプレッドシートに散らばっていた頃は、どの商談がどこで何日止まっているのか、誰にもわかりませんでした。一つの場所に集まったことで、止まっている商談が見える。見えれば、放置される前に手を打てる。各担当者の成約率が軒並み上がったのは、個人の腕が急に上がったからではなく、間に落ちる商談が減ったからだと見ています。

このプロジェクトでは、商談フェーズの定義も見直しました。それまで4段階だったフェーズを8段階に細分化し、各担当者の対応を徹底しています。フェーズが細かくなると、どの商談がどの段階で止まっているかが一目で分かります。「間」を測るには、まず工程の区切りを細かく定義する必要があります。

なお、ここで扱ったのは営業の商談管理の定着です。契約・請求データの統合による予実のズレは別の話で、誰も入力しない項目と、誰も見ないレポートだけが増えていくに書いています。


BizOpsは「間」に対して具体的に何をするのか

BizOpsが間に対してやることは、測る・決める・気づく・続ける、の4つです。

① 測る:間の滞留を数字にする

まず、工程ごとの状態(フェーズ)を定義し、それぞれの間に何日かかっているかを測ります。間が見えないうちは、改善の議論そのものが始まりません。

② 決める:間に期限を置く

「引き継ぎから◯営業日以内に初回商談の日程を確定する」のように、間ごとに期限を決めます。部門をまたぐ約束なので、どちらか一方の部門だけでは決められません。

③ 気づく:滞留したら、人が探さなくても気づける仕組みにする

期限を過ぎた商談は、アラートやレポートで自動的に浮かび上がるようにします。「誰かが気づいたら対応する」運用は、忙しい月に必ず崩れます。

④ 続ける:現場が無理なく守れる形にする

入力項目を増やしすぎると、現場はまたスプレッドシートに戻ります。守れないルールは、ないのと同じです。

①から④のどれも、特定の部門の中では完結しません。だからこそ、部門の外に立つ役割が要ります。

経営者の方へ: 「間」の期限を決める会議に、どの部門の誰が出ているかを確認してください。インサイドセールスと営業のマネージャーだけで決めようとすると、たいてい互いの事情を主張し合って終わります。調停する第三者が必要です。


SalesOps・RevOps・BizOpsは何が違うのか

三つの違いは、扱う「間」の範囲の違いとして整理すると分かりやすくなります。

名称扱う「間」の範囲
SalesOps営業部門の中の間(商談フェーズとフェーズのあいだ)
RevOpsマーケティング、インサイドセールス、営業、カスタマーサクセスなど、収益プロセスをまたぐ間
BizOps上記に加え、契約・請求・バックオフィスまで含めた事業全体の間

会社によって定義は違いますし、名称より中身で見るべきだというのが私の考えです。ただ、「どこからどこまでの間を持っているか」で見ると、自社に必要な機能がどれなのかは判断しやすくなります。

営業の前工程だけを見ていれば、RevOpsで足ります。受注の後ろ、契約や請求で詰まっているなら、それはBizOpsの領域です。

BizOpsという名前そのものがなぜ要るのかは、「名前のない仕事」から「名前のある機能」へで書いています。


「間」の改善はAIに代替されるのか

間を詰める作業の多くはAIに代替されます。ただし、どの間に手を入れるかの判断は、人に残ります。

アラートを設定する、レポートを組む、引き継ぎのメールを自動で送る。こうした実装作業は、すでにAIやノーコードツールでかなりの部分が置き換えられます。

一方で、次の判断は、事業と組織の両方を見ていないとできません。

  • どの間がいちばん率を落としているのか
  • 部門同士の利害がぶつかったとき、どちらに寄せるのか
  • 9割を仕組みに乗せて、残りの1割をどこで諦めるのか

AIが速くしてくれるのは実装であって、どこを実装すべきかを決めることではありません。全社最適のプロジェクトが外注頼みになってしまう理由は、別の記事でも書いています。


御社の「間」は、誰が持っていますか

数を増やす努力は、どの会社もしています。行動量の目標があり、達成した人が評価されます。でも、間を持っている人は、ほとんどいません。

数は現場、間はBizOps。

まずは、御社でいちばん案件が止まっている引き継ぎを一つ選んで、そこに何日かかっているかを測ってみてください。その数字が、BizOpsの最初の仕事になります。


よくある質問

Q. BizOpsとは、何をする仕事ですか?

事業運営を仕組みで支える仕事です。私は「数は現場、間はBizOps」と定義しています。アポ数や商談数といった数を生むのは現場で、BizOpsは部門や工程の「間」に潜む滞留を削り、リードタイムを縮めることで転換率を上げる役割を担います。

Q. RevOpsとBizOpsの違いは何ですか?

扱う「間」の範囲が違います。RevOpsはマーケティングからカスタマーサクセスまでの収益プロセスの間を、BizOpsはそれに加えて契約・請求・バックオフィスまで含めた事業全体の間を扱います。会社によって定義は異なるため、名称より「どこまでの間を持っているか」で判断するのが実務的です。

Q. 商談化率や受注率を上げるには、まず何をすべきですか?

工程間の滞留を測ることから始めてください。インサイドセールスから営業への引き継ぎなど、工程の間で何日かかっているかを数字にすると、どこで案件が失われているかが見えます。行動量を増やす前に間を詰めるほうが、少ない投資で率が上がります。

Q. SFAを入れれば、間の問題は解決しますか?

入れるだけでは解決しません。HR Tech企業でもSalesforceは2011年頃に導入済みでしたが、定着せず商談情報は個別管理のままでした。成果が出たのは、スプレッドシートなどでの管理を全廃し、情報を一つに集めて間が見える状態をつくってからです。


お知らせ

「数字は達成しているのに、受注が伸びない」「どの引き継ぎで案件が消えているのか、測り方がわからない」。そんな経営者・責任者の方、ご担当者の方は、お気軽にご相談ください。

現場に入って、御社の「間」を測るところから一緒にやります。初回のご相談は無料です。

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参考文献・出典

  • 東洋経済オンライン「セールスフォース記事広告」(2018年7月):https://toyokeizai.net/articles/-/224083
  • HR Tech企業のSalesforce定着プロジェクトの時期・数値(2017年2月開始、2017年8月頃に月当たり商談成約率が約2倍、受注予測と実績のズレ10〜15%が解消)は、筆者(祖川慎治)の実務経験に基づくものです。特定の企業を指すものではありません

この記事を書いた人

祖川 慎治(そがわ・しんじ)

株式会社テイクアステップ 代表取締役/一般社団法人BizOps協会 代表理事。大手メーカー・大手SIerを経て、HR Techベンチャーで全社の業務改善を担うBPR部署の責任者として社内IT戦略の立案から実行・定着化までを担当。5年で300名から1,400名へ成長する組織とIPO実現を業務基盤の面から下支えした。2021年に株式会社テイクアステップを設立し、BizOps・業務プロセス設計の実行支援を行う。ポッドキャスト「どうする?BizOps」配信中。

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