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シート課金のSaaSを疑う-SaaSの価値構造が変わる時代に企業はどう備え、BizOpsはどう変革をしていくか-

BizOps SaaS AI BaaS コスト最適化
シート課金のSaaSを疑う-SaaSの価値構造が変わる時代に企業はどう備え、BizOpsはどう変革をしていくか-

株式会社テイクアステップ 代表取締役の祖川です。

突然ですが、あなたの会社でこんなことが起きていませんか?

  • 使っているSaaSのライセンスが高すぎて、本当は全員に使わせたいのに一部の人だけに制限している
  • 使っているSaaSの月額費用が、社員が増えるたびに比例して膨らんでいく
  • 「ウィンウィンの関係です」とベンダーは言うが、プラスの提案がないまま毎年コストが増加し続けている
  • AIを活用したいが、既存のSaaSとどう組み合わせればいいかわからない

もし一つでも心当たりがあるなら、今回の記事は参考になるはずです。

今回は、AIの進化によってSaaSの価値構造そのものが変わりつつあること、そしてその変化に企業としてどう備えるべきかをお話しします。


目次

  1. シート課金の構造的な問題
  2. SaaSからBaaSへ — 価値の重心が移る
  3. BizOpsがこの変化を推進する
  4. まとめ・おわりに

1. シート課金の構造的な問題

全員に使わせたいのに、人数分の課金が発生する。企業が成長すればするほどコストが膨らむこの構造は、本来の「ツールで生産性を上げる」目的と矛盾している。

「全員に使わせたいけど、高すぎる」

SaaSの多くはシート課金モデルを採用しています。 1ユーザーあたり月額いくら、という課金体系です。

これ自体は合理的に見えます。 使う人の分だけ払う。フェアに見える。

でも、実際に企業の中で何が起きているかというと…

本当は全従業員にアクセスさせたいのに、コストが合わないから使う人を絞っている。

たとえばSalesforceのEnterprise版。1シートあたり月額1.8万円。 100人の会社で全員に配ったら、それだけで年間2000万円超。

その結果、営業だけと利用者を制限する。

  • 社内では事業を作っているプロダクトやエンジニアはどのお客様が反応し、提案した後受注や失注した理由を一覧で網羅的に見たいのに。
  • いつ頃どの程度受注が来るのか、コーポレートの方々は見たいのに。
  • 業績を管理している方々は事業の予測のために見たいのに。

データは一部のシステムを利用している人間しか見られない。意思決定に必要な情報が、必要な人に届かない。

これは「ツールで生産性を上げる」という目的と矛盾しています。

ベンダーが言う「ウィンウィン」の実態

SaaSベンダーはよく「お客様の成長に合わせてスケールする、ウィンウィンの関係です」と言います。

率直に言って、これには違和感があります。

企業が成長して人が増えた。それだけでコストが増える。 ベンダー側は、プラスの提案がなくても、ただ人数が増えるだけで売上が伸びる。

プラスの価値を提供しないまま、企業の成長に便乗して課金が膨らむ。それはウィンウィンではなく、依存に近い構造です。

本来あるべきは、会社単位のライセンスか、利用量に応じた従量課金でしょう。 「何人使ったか」ではなく、「どれだけ価値を受け取ったか」で課金される方が、企業にとっては健全です。

経営者の方へ: 自社が支払っているSaaSの総額を、「1人あたり月額」ではなく「年間総額と、そこから得られている事業インパクト」で評価し直してみてください。人が増えるたびに比例して膨らむコスト構造は、見直す余地があります。


2. SaaSからBaaSへ — 価値の重心が移る

AIがUI(画面操作)を代替する時代、SaaSの価値はフロントエンド(画面)ではなくバックエンド(データ・API基盤)に移る。SaaSはBaaS(Backend as a Service)としての価値で選ばれるようになる。

なぜ「画面」の価値がなくなるのか

SaaSの大きな売りは、よくできたUI(ユーザーインターフェース) でした。 直感的に操作できる画面、ドラッグ&ドロップ、ダッシュボード。 これらに多大な投資をしてきたからこそ、シート課金で回収する必要があった。

ところが、AIの進化でこの前提が崩れつつあります。

Claude、ChatGPT、Gemini… これらのAIは、自然言語で指示するだけで、UIやSQLを出力できます。

「こういう画面がほしい」と言えば、AIが作ってくれる時代になった。

データベースの設計も、簡単なWebアプリケーションも、業務用のダッシュボードも。 技術力がなくても、業務プロセスを理解している人間がAIに指示すれば、かなりのことができるようになっています。

BaaSの民主化

つまり、企業が本当に必要としているのは「きれいな画面」ではなく、その裏にあるデータ基盤とAPI です。

顧客データ、取引データ、契約データ。 これらを安全に保管し、柔軟にアクセスできるバックエンド。

SaaSの価値は、フロントエンド(UI)からバックエンド(データ・API)に重心が移っていきます。

つまり、SaaSはBaaS(Backend as a Service)としての価値で評価される時代が来る。 そして、フロントエンドはAIを使って自分たちで構築する。

完璧じゃなくてもいい。 必要になったら改善すればいい。 最初から100点の画面を求める必要はない。

自社の業務プロセスに合った画面を、AIを使って素早く作る。 合わなければ、すぐに直す。

このスピード感こそが、シート課金で提供される画一的なUIよりも価値がある。

SaaSベンダーのジレンマ

ここにSaaSベンダーのジレンマがあります。

UIに莫大な投資をしてきたからこそ、シート課金をやめられない。

フロントエンドの開発・維持にかけたコストを回収するには、1人ずつ課金するしかない。

でも、AIがUIを代替できるようになると、その画面自体の価値が下がっていく。 バックエンドだけの提供に切り替えれば、課金モデルも変わらざるを得ない。 でも、それをやると既存の売上構造が崩壊する。

この構造転換に対応できないSaaSは、徐々に選ばれなくなっていくでしょう。

逆に言えば、APIが充実していて、バックエンドとしての価値が高いSaaSは生き残る。 選ぶ側の企業は、「画面がきれいで使いやすいか」ではなく「APIが使いやすいか、データ基盤として信頼できるか」 で判断する時代になっていきます。

経営者の方へ: 次のSaaS契約更新時に、「APIの充実度」と「データ基盤としての信頼性」を選定基準に加えてください。画面のきれいさではなく、バックエンドの価値でSaaSを評価する視点が、コスト構造を変える第一歩です。


3. BizOpsがこの変化を推進する

BizOpsの役割は変わらない。しかし、求められるスキルが変わる。特定のSaaSに詳しいことよりも、業務プロセスを解像度高く捉え、AIベースで設計できる人材の価値が高まる。

今あるシステムを「疑う」ところから始まる

この変化を企業の中で推進できるのは誰か。

BizOpsです。

BizOpsの仕事は、事業全体のオペレーションを俯瞰し、最適化すること。 その延長線上に、「今使っているSaaSは本当に必要か?」という問いがあります。

このSaaSのライセンスコストを削減し、浮いた予算を事業投資に振り分ける。 BaaS(バックエンド)として使えるものは残し、UIはAIで自社構築する。

コストカットと事業投資の両方を同時に実現できるのが、BaaS×AIの組み合わせです。

「Skill」という考え方

ここで重要になるのが、業務プロセスをAIベースで再設計する という発想です。

たとえば、「見積書を作成する」という業務。 従来はSaaSの画面にログインして、テンプレートを選んで、項目を入力して…という流れでした。

これをAIベースに変えるとどうなるか。

AIに「この顧客向けの見積書を作って」と指示する。 AIがバックエンドのデータを参照して、過去の取引条件や価格テーブルをもとに見積書を生成する。

この「AIへの指示と、それに紐づくバックエンドの設計」をセットにしたものを、私は**「Skill」** と呼んでいます。

BizOpsの役割は、この「Skill」を設計し、従業員に配ること。 従業員は配られた「Skill」を使いつつ、自分の業務に合わせてカスタマイズすればいい。

BizOpsがAIベースの業務プロセスを設計しSkillを配布した後、従業員が配布されたAI(Skill)を微調整し業務にFitさせる。

この三層構造が、BaaS時代の業務の基本形になるでしょう。

SaaSからBaaSへの構造変化 — シート課金×UIモデルから、従量課金×API×AIモデルへ

価値が変わる人、変わらない人

この変化に伴って、BizOps人材に求められるスキルも変わります。

これまでは、「Salesforceの設定に詳しい」「HubSpotのワークフローが組める」といった、特定SaaSの操作スキル が重宝されていました。

もちろん、これらのスキルがすぐに不要になるわけではありません。

しかし、業務プロセスを解像度高く捉え、AIベースの設計に落とし込み、BaaSを組み合わせて実装できる人材の価値は、今後さらに高まっていきます。

ツールの使い方を知っている人から、業務の本質を理解して設計できる人 へ。

BizOpsにとっても、大きな転換点です。

経営者の方へ: BizOps人材の評価基準を見直してください。特定SaaSの操作スキルではなく、業務プロセスを設計し、AIとBaaSを組み合わせて実装できる力を評価する仕組みが、この変化を加速させます。


4. まとめ・おわりに

今回の記事でお伝えしたかったことを整理します。

シート課金のSaaSは、構造的な転換期を迎えています。

全員に使わせたいのに人数分の課金が発生する矛盾。企業が成長するほどコストが膨らむ構造。AIの進化によりUIの価値が相対的に下がる中で、この課金モデルを維持し続けるのは難しくなっていくでしょう。

SaaSの評価軸は、「画面のきれいさ」から「バックエンドの信頼性」に移ります。

APIの充実度、データ基盤としての堅牢さ、他システムとの接続性。 BaaS(Backend as a Service)としての価値が、SaaSの選定基準になっていきます。

そして、この変化を企業の中で推進するのがBizOpsです。

業務プロセスをAIベースで再設計し、「Skill」として従業員に届ける。 特定のSaaSに依存するのではなく、自分たちで設計と判断の主権を握る。

完璧を目指す必要はありません。 必要になったら改善する。そのスピード感こそが、これからの時代の競争力になります。

次回も、BizOpsの実践的なテーマでお話ししていく予定です。 お楽しみに。


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